■ 日本の新常識  ゴジラの遺産 〜巨大地震が都市を襲う!〜
ゴジラが誕生して50年になろうとしている。 南太平洋の原爆実験場で突然変異が起こり、異常な生物に急速進化したのが純国産モンスター・ゴジラである。 昭和29年この映画が出来た背景には原水爆実験反対の意思が込められていた。 単なる恐怖と破壊の映画ではなく、人間の暴走をゴジラに置き換え、科学の進歩が生み出す悪を現実世界に突きつけた純社会派映画だった。 娯楽を装いつつ、強烈なメッセージが込められていた。
ゴジラと巨大地震、どこにつながりがあるというのか。 それが新常識とは、一体何を根拠に・・。
東宝の特撮技術は次々と怪獣を生み出し、都市の破壊をエンターテインメントに仕立て上げた。 東京タワーなど何度壊され復興されたことか。 シリーズの継続に伴い、特撮も巧みになり、画面の合成もごく自然になっていった。 ハリウッド映画がSFXという言葉を使う前からずっと、光学的合成でその効果を上げる技術を確立していたのである。
その映画を見るにつけ共通した展開があることに気づく。 怪獣の現れ方である。 海で誕生した生物だからか、ゴジラは東京湾に出現し、都心に上陸する。 強烈な雄叫びを上げ、臨海工業地帯のガスタンクや石油タンク、送電線類をなぎ倒し、足下を走り抜けようとする通勤電車をワシづかみにし、ついには銀座に出現する。 高速道路では車同士がぶつかり合い、一部では火災が起きる。 現場は混乱、不意を突かれた人々は逃げまどい、自衛隊が出動して防戦に当たる。これはほぼ定番の登場シーンである。
ゴジラを巨大地震に置き換える。
主役の想像生物は見えないが、起きる現象は同じようになる。
震度6強の地震は大地を強烈に突き上げ、建物群は悲鳴を上げる。 臨海部では埋め立て地が液状化現象を起こし、乗っているコンビナート類が傾き、あるいはそこから火災が発生する。 送電線の倒壊、工業地帯では建物被害が続出する。 一方、都心部の稠密地帯では、走行中の列車の脱線、レールが曲がって鉄道事故が相次ぐ。 高速道路上ではスピードのコントロールを失った車がぶつかり合い、宙に舞う。 地下街で、高層ビルで人々は逃げ場を見失い、いたずらに出口に殺到、ケガを負う。通 信機器は機能せず、情報は途絶。 発災から数時間後、被災者の救出と復旧のため自衛隊が出動される。
・・・置き換えるとこうなる。
つまり、50年前の社会派娯楽映画は、今後起こりうると想定されている巨大地震の有り様を架空の生物に姿を借りて描いていたのである。 我々には地震災害の想定イメージという無形の遺産がすでにあったのだ。
では、こんなことが本当に起こりうるのだろうか。
驚くことに、確率は高い。その特長をあげよう。
・震度6強のゆれ、長時間、建物の全壊4万棟強
・広域火災の発生、死者7,000人あまり、15万人がケガ
・ライフラインの途絶20%強
・被害額総額80兆円強
国家予算の1年分が一瞬の地震で吹き飛ぶ。 死者は火災によるもののみとなっているが建物被害を考慮に入れれば、その数は計り知れない。 特に阪神大震災で顕著となった倒壊建物の下敷きによるクラッシュ・シンドロームは深刻で、仮に救出されでも生存の確率は低く、現在では被災現場で医療措置を執るのが最も効率的と言われている。 もちろんそのような余裕はない。
東京が体験する戦後最大、史上最悪の災害となる。 生産の停止、流通の断絶、ネットワーク網の中断などあげていくと、復旧活動を経て正常に戻るまでの経費と損害はいかばかりか。 国家的な防衛活動=防災活動をまじめに考える根拠が分かってくる。
しかしこれは、M7.2の直下型地震に限った話である。 ゴジラは実はもう一匹潜んでいる。 今度は超弩級、M8以上である。 関東大震災級の地震が駿河湾沖で起きることもあり得るのだ。 これは長年言われ続けてきた関東大震災の再来である。 ゴジラは地中から襲って来る。 その特徴は次のようになる。
・震度7のゆれ
・長周期地震動、高層ビル、海浜部の工業施設に被害
・関東一円広域被害、孤立化
・ネットワークの崩壊
東京で二匹のゴジラが同時に暴れることはない。 しかし、にわかに注目されだした東京直下型地震は、東海地震の発生検証を行う過程から出てきたもので、話はごく新しい。
整理してみると、このようになる。
<東海地震>発生確度:高
静岡、名古屋を中心とした東海地震はいつ起きても不思議では状況が続いている。
・その場合、東京は震度5強で、建物被害は深刻ではない
・通信網、災害情報とその伝達に混乱が懸念される
・東海地方は所によって震度7となり、震度6弱の強化地域(255市町村)は横揺れのよる建物倒壊、その下敷きとなるけが・死傷者の発生、火災、産業界の損害が深刻となる
・津波の発生で、沿岸部には防潮堤を越える津波が到来し、被害を出す
・M8の巨大地震で、東海地方から中部地方は深刻な被害を受ける。東海道新幹線、東名高速道路が被災し、日本の東西が一時分断される。
<東南海地震、南海地震>発生確度:2030年/40%〜50%
静岡から愛知、紀伊半島、四国に至る太平洋岸を対象として、海溝型の地震で、エネルギー規模は過去最大と推定されている。 ともにマグニチュードは8.4と超弩級である。 阪神大震災の128倍。 わが国では未経験の巨大地震である。
・津波の発生、最大波高10m強、到達時間10分から2時間
・紀伊半島から大阪湾に至る広域が津波被害
・停電などのライフライン被害が超広域に及ぶ
・長周期地震動により、建物被害、スロッシング現象が発生、石油タンクの火災炎上が起きる。港湾施設の被害、船舶の避難遅れ
・高層ビルの共振現象、内部の被害の増大
・地下街の浸水被害、多くのケガ人が発生
・通信の輻輳、使用規制
驚き話はさらにつづく。
東海地震、東南海地震、南海地震という3つが同時に起きる可能性もあると推定されているのだ。 安政には3時間の間をあけて起きている。 過去最大級のエネルギー規模の地震が同時に日本の中央部付近で、日本の現代社会を直撃。 ハイテクノロジー社会は前代未聞の試練を迎える。 複雑さと精緻さ、ネットワークという現代が生み出した知的回廊が、圧倒的な物理量を前に危機にさらされる。
持ちこたえられるとは到底思えない。
これではまるで「首都消失」、「日本沈没」ではないか。 作家の小松左京さんにインタビューしたことがある。 曰く「誰もが疑わない中心的なものが無くなるとどうなるか、それを描いてみたかった。」 つまり、首都東京が無くなるなどとは誰が想像するか、思ってみるものか。 逆にそれをやってみることで、重要性が分かってくるというのである。 しかし、今後はフィクションのようには行かない。 なにせ国家予算相当額が失われることが分かっているのだ。 もしそれが出来なければ不作為と言われても反論はできまい。 ここに日本の新常識が必要となる所以がある。
新常識では何を旧常識と置き換えるのか。
次はこれを見る。