■ 日本の新常識 #3 家屋の倒壊と救出、クラッシュ対策
東京直下型地震の被害想定で明らかにされた被害の概要は意外なほど現実感がない。
耐火構造の高層マンション、コンクリと鉄で固められた地下街、高速道路。 臨海部では超高層のビジネスビルが天を突き、どこに破綻が潜むのか、どこに危うい罠があるのか外観では分からない。 しかしそれは単なる思いこみに過ぎないことが次第に分かってくる。
都内には木造住宅密集地や古い住宅基準で立てられた地域が広大な住宅地を形成している。 さらに、耐震基準に充たないビルやマンションも膨大な数にのぼる。 もしそれらが地震の揺れで倒壊し、その下敷きになったとしたら。不運ではすまされない現実がある。
先日行われた、ある町内の自主防災訓練でそうした課題が明らかになった。 地域防災はある反面、もはや地域の問題では片づかない側面を持っている。
訓練の様子を映像でたどりながら、そこに迫る。
1. ここまでは出来る
2. ここからが出来ない
3. 何がそれを阻むのか
4. 東海では
5. 広域対応の意義
その1. ここまでは出来る
東京荒川区の西尾久4丁目には全国に誇る自主防災組織がある。 RESCUEと背中にプリントされた赤いブルゾンのロゴが語るように、 この町ではひとたび地震災害や自然災害が起きるとお年寄りと子供以外は全員が発災時のレスキュー要員に早変わりし、 町内住民の救出に当たることになっている。 おそろいのブルゾンを着るということは、それだけの義務を自らが負うことを意味している。
阪神・淡路大震災が起きた平成7年、西尾久4丁目レスキュー隊は組織されている。 木造住宅の倒壊とそれによる圧死が人ごとではなかったからだ。 以来、年に4回の自主訓練と機材整備は欠かさず行われている。 今回、地震発生を想定した訓練を実施したのも、昨年の新潟県中越地震、福岡県西方沖地震と立てつづけに起きた地震に町内の関心を引きつけたいからだった。 さらに、自主訓練がややもするとルーチン化し、救出にのみ意識が集中する危うさもある。 救出の迅速さはこのレスキュー隊の売り物である。 しかし、建物の倒壊現場から瀕死のけが人を助け出すには速さばかりでなく、搬送後どうなるのかという不安もある。 東京の現状では救出と地域医療の連携はない。トリアージの必要性も伝えられていない。 最近の防災活動には新しい要素も加わり始めている。 それらと自前の訓練がどのようにつながっていくのか、そこを検証したいという思いも手伝った。
医療の専門家も招かれた。静岡市で災害と救急医療を専業とするドクターである。 訓練では指導の側に回るのではなく、西尾久レスキュー隊の活動に、今後どんな要素が加われば救出から搬送、治療に至る道筋が見えてくるのか、そこを指摘するためだった。
訓練の内容である。
訓練は家屋の下敷きを想定した。 その設定には廃材などを使い生身の人間をそこに配し救出する。 実践そのものである。 今回は自主訓練の情報を聞いた警視庁のレスキュー隊も参加する。 救出は消防ばかりでなく警察の支援を仰ぐ場合も予想されるため、重機を使った救出は警察が担当する。
民間で調達可能な動力カッターと重機の組み合わせ。 どこまで迅速に、ケガ人を無事救出・搬送できるのか、待ったなしの訓練が始まった。